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思春期

思春期の生と死(その1)

 思春期に近づく小学校高学年になると、子ども、あるいは友だちの言葉使いが気になるという人も多いのではないでしょうか。

 「キショい」「キモい」「死ね」「殺す」などの言葉が日常的に家の中、学校の中で飛び交っていて、耳にすると嫌な気分になったり傷ついてしまうこともあるでしょう。保護者の方にとっては心配になってしまうことでしょうね。

 思春期にはなぜ、そのような言葉がたくさんあふれてしまうのでしょうか?

 それには、「思春期」という特別な時期の、特別な事情による、というところがあります。

 思春期は大人と子どものちょうど境目にあたる時期で、多感で、扱いが難しい、ということはよく知られていることですね。早い人は小学校高学年から、中学生になるとほぼ全員に身体的な変化が始まり、ホルモンバランスの乱れから身体の不調や、イライラや不安などが高まり、第二次反抗期と呼ばれる時期に入ります。

 その特別な時期に心の中で何が起きているのかということをのぞいて見ると、その「特別な事情」が少し見えてきます。

 一つは、思春期に大人への扉が開くこと、大人にむかって心身共に成長していくことが、一方では心理的に「子どもとしての死」を体験しているということです。もちろん本当に心や身体が死んでしまうわけではありませんが、もう子どもに戻ることができない、という意味で心理的に「死」を迎えるということです。子どもとして死んで、大人として新しく生まれ変わると言った方が良いかもしれません。

 つまり、生まれ変わる渦中にある思春期には、意識・無意識的に心の中で「死」に対する恐怖や不安が大きくふくらんでいるということになります。最初に述べた思春期特有の言葉づかいは、その思春期の心の世界の一端があふれてきていると言えるでしょう。


 今回はここまでです。次回は思春期の心の中の死の体験について、もう少し話を進めていきたいと思います。

メンタルヘルスコラム心の「排泄」機能

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