大阪市PTAだより 第658号

*以下のコラムは、スクールカウンセラーとして「大阪市PTAだより」に掲載したものに加筆修正を加えています。

子育ての中の“おばけ”

スクールカウンセラー 溝口前子

みなさんは“おばけ”に出会ったことはありますか?大人なら当然、子どもでも幼稚園くらいになると、“おばけ”が現実にはいないことを知っています。“おばけ”は、物語や遊びの中、夢といった空想世界や心の中にだけ登場し、「本当にはいないけど怖い」楽しさがあります。

しかし、“おばけ”が現実に居座ってしまい、困ったことが起きることもあるのです。“おばけ”は、普段は小さくて気がつかないものですが、心が危機的状況になった時には大きく膨らんで、心の中を不安と混乱でいっぱいにしてしまいます。

あるイギリスの心理学者たちは、両親の乳幼児期の傷つきや不安の体験が、子育ての中で知らず知らずに繰り返されてしまうことを、“赤ちゃん部屋のおばけ”と呼びました。過去の“おばけ”が世代を超えて伝わり、子育てをさまざまに困難にするというのです。

日常の中でも“おばけ”は常に人から人へ伝わっていきます。幼い子どもは日常的に“おばけ”と出会っています。独りぼっちの時、トイレの中、暗闇など、自分を守ってくれるべき大人がいない状況は、幼い子どもにとっては危機的状況です。

つまり“おばけ”が大きく膨らんでいる状態だと言えます。子どもが不安と混乱でいっぱいになると、通常であれば、大人がその“おばけ”を小さくおとなしくして、子どもに返してあげます。そうやって、大人から学び、子どもはだんだんと自分の力で“おばけ”を小さくできるようになるのです。

しかし、もし大人の心がすでに不安と混乱でいっぱいで余裕がない時、“おばけ”は拒否されるか、あるいは大人の中でまたさらに大きくなり、その結果、子どもにイライラしたり、子育ての自信をなくしたり、投げ出したくなったり、とさまざまに悪さをするようになります。そしてまた大人から子どもへ、子どもから子どもへ、ある時には幼稚園や学校などの集団へと、“おばけ”はどんどん大きく膨らみながら伝わっていくのです。

この“おばけ”を大きく「本当に怖い」ものにしないでおく方法は、“おばけ”の声に耳を傾け、理解し、抱えてやることなのです。それには、まず大人が自分の心の中にある“おばけ”をよく理解し、励まし、抱えることが大切なのです。

大阪市PTAだより 第658号  2014 年4月20日発行